何も触れない、一体どうしたんだろう?
朝起きると、俺の身体が変な事に気付いた。
スマホを取ろうとしたら、何故か取れない。
というか触る事が出来ない。
何故触れない、何回やっても触れない、なんなんだ?
ちょっと考えてみた。
もしかして、俺死んだのか?
幽霊になっているから、触れないのか?
でも昨日の夜は、普通に仕事から帰ってきて、風呂入って、飯食って寝ただけ、特に何も変わった事は無かった。
寝てる間に何かあって、死んでしまったのか?
そんなわけがない。
胸に手を当てると心臓の振動が伝わる、やはり俺は生きている。
じゃあなんでスマホに触れないのか?
ん?布団にも触れない、ベッドには腰かけてるから、ベッドには触れているのか?
いや、違う。
ベッドにも触れていない、ちょっとだけ浮いているような感じだ。
おしりの感覚がベッドを認識していない。
触れてない!!
何だこれは???
これでは起きた時に必ずやる、シーツと布団の直しが出来ない。
ぐちゃぐちゃになった布団とシーツは耐えられない、早く直したい!
そんな事言ってる場合ではない。
この状況をどうすればいいのか、少し落ち着いて考えなければ。
ん?待てよ?これは俺だけじゃなく、世界中で何かが起こって全ての人間がこうなってるのかも。
カーテンを開けて外を見たいが、触れないので開けられない。
すると、音が聞こえてきた。
ブーン・・・、ブーン。
これは車の音?車は普通に走っているようだ。
「おはようございます」
「おはよう」
外ではご近所同士で、普通に朝の挨拶がされていた。
周りは何も起きてないようだ。
やはりこれは俺だけだ。
この事を誰かに伝えて、助けて欲しいがどうすれいいのか・・・。
何も触れる事が出来ないから、スマホから電話したくても出来ない。
外に出たいがドアも開けられない。
あっ、そうだ!ここはアレクサに聞いてみよう。
「アレクサ、何も触れないんだけどどうすればいい?」
「すみません、よく分かりませんでした」
だよな、こんな時に何を聞いているんだろう、俺は。
あっ!声は聞こえるのか!
何人か同じ症状がいて、何かニュースになってるかも。
アレクサでニュースを聞いてみよう!
「アレクサ、ニュース」
「はい、NHKでニュースを流します」
5分ぐらい聞いたが、それらしいニュースは無かった。
よし、次はアレクサを使ってテレビを点けてみよう、何か情報が得られるかもしれない。
最近声で操作できるように色々と設定しておいたのがよかった。
「アレクサ、テレビを点けて!」
「はい、テレビを点けました」
たまたまNHKだったが、そんな都合よくそういった話題は全くやっていない。
しばらくそのまま点けておけば、何か分かるかもしれないから、つけっぱなしにしておこう。
うーん、アレクサで他に何か出来ないかな。
そうだ!アレクサで電話出来ないか?
よーく考えたら、エコー同志の通話は出来るが、スマホに登録してある番号には出来ないな、ダメか。
起きてからすでに1時間が経っている。
なんか疲れたなーと思い、少し気が緩んだところへ・・・。
急にトイレに行きたくなってきた。
普通ならドアを開けて便座に座り、用を足せばいいだけなんだが、それが出来ない!!
ちなみに俺は、小でも座ってやるタイプで、済んだ後も先っちょをトイレットペーパーで拭くんだが、この事は誰にも話したことない。
そんなことはどうでもいい、そうまずドアが開けられないのだ。
仮にドアが開いていたとして、便座に座って放出したとしよう。
果たして尿は便器に到達するんだろうか?
尿はどうなるんだ?どこに行くんだ?
そう考えると出せない、けど限界が近づいている。
やるしかない!!
私はその時、ジョルノジョバーナの様に頑固たる決意を固めた。
よし、トイレのドアが開けられないとしたら、風呂、洗面台、流し台がいいかもしれない。
何かの容器があればいいんだが、見当たらない。
まず風呂だが、何かあったとしても処理がしやすそうなので一番いいんだが、そもそもドアが開けられないから無理。
残すは洗面台か流し台。
流し台は食器など洗い物をするから、ここは抵抗がある。
洗面台なら、歯磨きとかするし、流し台よりはいいだろう。
という事で洗面台に決定した。
いざ、洗面台へ!
洗面台へ向かうんだが、歩いている足の感じが少し気持ち悪い。
床に接触していないため、例えると無重力を普通に歩くという感覚。
少し慣れが必要だなと思う。
洗面台の前に到着したが、ちょっとした問題が起こった!
高さがあるため、あれが届かない。
少し背伸びすれば、何とか届きそうだ。
届いた!よし!イケる!やるぞ!!
「ピンポーン」
え?
このタイミングでピンポン?
誰だ?
「宅急便でーす」
宅急便だと?